前回まで記事でボカロオリジナル曲を作る準備について説明しました。
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前回の記事「ボカロPになるには?ボカロPを始める為の基礎準備」ボカロオリジナル曲を作ることは、すなわち作曲をすることになります。
作曲と言うと、非常に敷居が高く感じられるかと思います。
ですが、最近のDAWは最初からドラムのリズムパターンがいくつも用意されており、張り付けるだけでドラムパートを作ってくれます。
他の音色もピアノロールを使って直感的に音の長さや高さ(音程)をマウスで入れていけるので、楽譜が読めなくても作れるように出来ています。
一般的なDAWソフトはソフトウェア音源やオーディオ素材も豊富に用意されているので、楽器の演奏が出来なくてもDAWだけで曲を作れるように出来ているのです。
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参考記事「DAWってなんだ?現役ボカロPがこっそり教えるエントリーDAW」それでも難しいそう!って思う方もいらっしゃるかと思います。
ですが、もう一度思い出してください。ボカロPになりたいと思ったきっかけを。
自分で作ったオリジナル曲をボカロが歌ってくれて、それをニコニコ動画という場で公開して、沢山の方に聴いて貰っている自分の姿を想像してみましょう。
僕も作曲の知識はゼロからスタートしました。
ですが、作っていく途中でコードの仕組みがわからなくて調べたり、DTMの専門用語が難しくて調べたり、人から聞いたりして独学で学んできたのです。
どんな人でも最初から何もせずに作曲できる人なんていないのです。
音楽理論も大切ですが、それは必要な時に必要なだけ調べて習得していけばいいのです。
まず、最初の一歩を踏み出さなければ始まらないってことを、ここではあえて強調しておきましょう。
それでは、ボカロオリジナル曲の制作の流れについて説明していきましょう。
ここで紹介するのは僕の作曲の仕方です。
作曲の方法については、人それぞれだと思いますので、どれが正解とかっていうものはありません。
一つの参考にして頂ければ嬉しいです。
1、曲のイメージを考える
まず、「どんな曲をつくるか」を先に考えます。
Pop系がいいのか、ROCK系がいいか、アニソン系にしようか、トランス系にしようか、〇〇Pさんみたいな曲にしようか、色々考えましょう。
ここでは、ガッツリと曲の構成とか考えなくていいです。
自分がどんな曲を作りたいかをイメージするだけでいいです。
実際に作り始めると、最初のイメージと変わることも多くありますので、 この段階ではどんな曲調の曲を作るかを頭に浮かべておいてください。
2、使うボカロを考える
曲のイメージがある程度決まったら、歌わせるVocaloidを考えます。
ボカロPをこれから始める方は、ボカロは一種類しか持っていないかと思うので、手持ちのボカロで良いでしょう。
複数持っている場合は、曲調や人気、誕生祭などのイベント等を踏まえて僕は決めています。
使うボカロには得意な音域があります。
例えば、
初音ミクV3の「ORIGINAL」と言うライブラリであれば、A2~E4となっています。
この範囲の音域であれば上手に歌えるよって言う目安です。
あくまでも目安なので、この音域外でも歌えます。調整してやれば音域はもっと広がるので、参考程度だと思って下さい。
ちなみに、A2のAは「ラ」の音です。E4のEは「ミ」の音です。
数字は小さい方が低い音、数字が大きい方が高い音になります。
簡単に紹介しておくと、
C=ド D=レ E=ミ F=ファ G=ソ A=ラ B=シ
となっています。
最初は「C=ド」と覚えて、指折り数えるぐらいでいいと思います。
3、サビのメロディーを考える
作りたい曲調と、使うボカロが決まったらメロディーを考えていきましょう。
「メロディーの作り方がわからない」って声が聞こえてきそうですね。
でも、難しくDAWに向かって悩むことはないです。
僕の場合は鼻歌で、ふん♪ふん♪ と先ほどイメージした曲調に近い感じでサビのメロディーを考えていきます。
なかなか、DAWに向かっているとメロディーってあまり思いつかないんですよね。
作曲初心者であれば作曲理論も十分に習得できていないので、最初は「メロディーは天から降ってくる」もんぐらいで思っていいと思います。
僕は通勤途中や休憩時間等にメロディーを考えていることが多いですね。
思いついたメロディーはスマホのアプリを使って録音・保存しています。
(DAWに向かっててもメロディー思いつく方は、ここの記事は目を瞑ってください)
メロディーが思いつかない場合は、イメージに近い曲を沢山聴くことをお勧めします。
メジャーな曲は、プロの作曲家が作ったメロディーのノウハウが詰まっています。
最初は「ここの音が好き!」とか、「ここカッコいい!」とかって言う部分を何度も聴いて感覚で覚えるといいでしょう。(パクリはダメよ)
DAWに向かってメロディーを考える場合はMIDIキーボードを使って適当にメロディーを弾いてみるのも一つの手でしょうか。
メロディーを先に作る人と、コード進行を考えて伴奏を先に作る人と色々いらっしゃいますが、僕はメロディーから作ります。歌詞先でそのあとメロディーを作る方もいるので、自分に合った順番を選ぶといいでしょう。
コード作曲法 ~藤巻メソッド~
4、メロディーをDAWに打ち込んでいく
サビのメロディーが出来たら、DAWにメロディーを打ち込んでいきます。
実際はボカロが歌うので音色は何でもいいですが、僕はリードシンセ系を使っています。
画面は
CUBASE 7のものです。
メロディーが出来た時点で、曲のテンポがほぼ決まっていると思うので、自分のメロディーに合った曲のテンポを設定してあげましょう。
テンポの設定方法は使っているDAWで異なります。
5、メロディーに合わせて仮オケを作る
サビのメロディーに合わせて伴奏(オケ)を作っていきます。
曲のイメージを作るので、ザックリ作っていきます。
ドラムパートを作る
まずはリズムの基本となるドラムから作るといいでしょう。
基本ビートで打ち込んで、細かいフィルイン(オカズとも言います)はあとで編集していきます。
この時点で作りこんでも問題はありません。
ドラムパートは直接打ち込んでも良いですし、MIDIループファイルから選んで張り付ける事も出来ます。
張り付けたMIDIデータを自分で曲に合うように編集して使う事も出来ます。
オーディオ素材をキック、スネア、ハイハット、シンバルと個別に張り付けて作っていくのも良いでしょう。
僕は基本となるリズムパターンを1から打ち込んで、コピー&ペーストしたものを繋げていく方法を取ることが多いです。
コードを割り当てていく
ドラムパートが出来たら、曲のメロディーを支えるオケのコードを決めていきます。
メロディーに合わせてコードを当てはめていき、一番聞こえが良いものを選んでいきます。
スグに使えるコード進行レシピ
コードを決めていく作業なので、これも音色は何でも良いですが、僕はパッド系かオルガン系を使う事が多いです。
ベースとその他のパートを打ち込んでいく
コードが決まったら、まずベースから打ち込んでいきます。
ベースは曲全体を支える音なので、基本的にはコードのルート音(コードの一番下の音)を使う事が多いです。こちらも最初は8分音符の刻みとかで簡単に作っておきます。
ベースを打ち込んだら、曲調に合わせて他の楽器を決めていきます。
バンドサウンドを目指すならエレキギター、トランステクノならシンセ系、和風ロックなら三味線や尺八とかでしょうか。
特に決まりはないので、一番最初にイメージした曲調に近づける音色を選択し、先ほど決めたコードに合わせて他のパートも作っていきます。
ハモリパートもこの時点で僕は作っています。
6、曲全体の構成について考える
サビのメロディとオケが出来たら、曲の構成について考えます。
先に曲の構成を考える方もいらっしゃるので、これも順番は人によって違うでしょう。
僕の考えの一つですが、歌モノの曲は「サビが命」だと思っています。
サビが盛り上がらないと、聴いていて「良い曲だな」って思えないので、僕は先にサビ部分を作る事が多いですね。
曲の構成は、
イントロ⇒Aメロ⇒Bメロ⇒サビ⇒Aメロ⇒Bメロ⇒サビ⇒間奏⇒Cメロ⇒サビ⇒サビ⇒エンディング
といった一般的なものや、
最初からサビで盛り上げるとか、イントロ⇒サビとか。
これも決まりは無いので、ご自身の曲をどういう形で仕上げたいかを、先ほど作ったサビのイメージから膨らませて決めるといいのではないでしょうか?
余談になりますが、サビが命なら、「イントロは顔」だと思っています。
当たり前ですが、イントロは曲の初めの部分です。
ここで、リスナーの心を掴めないとニコニコ動画の場合、サビまで聴いて貰えない可能性が出てきます。
せっかく良いサビが出来ても、サビまで聴いて貰えなかったら意味が無いので、イントロ部分には特に力を入れて作ることをお勧めします。
7、曲全体のメロディーやオケを作っていく
曲全体の構成が練りあがったら、イントロ、Aメロ、Bメロ、間奏などを作っていきます。
メロディーを作る際には「サビが一番目立つ」ようにAメロやBメロを作るといいでしょう。
最初は、曲全体のメロディーでサビが一番高い音を出すことを意識すると上手くいくと思います。
オケについては、サビで使っている音色の数より減らしたり、各パートの音の動きを控えめにすることで、よりサビを目立たせることが出来ます。
8、ボーカルのメロディーをVocaloid3 Editorに読み込む
ボーカルのメロディーデータをVocaloid3 Editorに読み込みます。
DAW上で作った音のデータは「MIDIデータ」というフォーマットに変換して出力できますので、一度MIDIデータとして書き出して、それをVocaloid3 Editorで読み込む形になります。
まずはMIDIデータで出力しましょう。
出力したMIDIデータをVocaloid3 Editorで読み込みます
[ファイル]⇒[インポート]⇒[トラック]と進みます。
読み込む際はウィンドウ右下の「VOCALOID MIDI , SMF」を選択すると、MIDIファイルが表示されて読み込めるようになります。
MIDIデータを読み込みました。
9、歌詞入れ、調整を行う
読み込んだメロディーデータに歌詞を打ち込んでいきます。
あらかじめ「ひらがなで」歌詞が用意されているようであれば、「ジョブ」⇒「歌詞の流し込み」機能が大変便利です。
歌声が自然になるまで数々のパラメータを上手に調整して歌わせましょう。
上手に歌わせるコツとしては、特にベロシティ「VEL」とピッチベンド「PIT」をうまく使って下さい。
ベロシティ「VEL」は声を発音する際の子音の発生タイミングを調整するものです。
上下に上げ下げして、自然に前の音と繋がるタイミングを探しましょう。
また、歌い方が機械的に聴こえたり、発音が上手くいかない場合はピッチベンド「PIT」で発音する音の頭の部分を少しいじってあげると聴こえやすくなることが多いです。
試してみてください。
ボーカロイド公式 調教完全テクニック
10、歌をオーディオファイルで書き出し、DAW側で読み込む
調整が終わったら、歌をオーディオファイルで書き出します。
ハモリパートがある場合は、別々に出力して下さい。
[ファイル]⇒[エクスポート]⇒[Wave]を選択
ハモリパートがある場合は「トラック毎に個別」を選択すると別々に出力してくれます。
出力したオーディオファイルをDAW側で読み込みます
11、曲の細部を仕上げる
ここまで来たら、あと少しです。
作ったオケの仕上げをしていきます。
歌と合せてみて、オケで足りない部分を追加したり、ドラムパートやベース、その他パートを歌に合わせてアレンジを加えたりしていきます。
効果音を加えたり、パートを重ねて音の厚みを出したりして、曲を豪華にしていきましょう。
コツとしては、音域を固めないことです。
音が薄い音域や、音が鳴っていない音域とかがあれば足してあげることで、全体的に厚みを持ったサウンドが作れます。
ボーカルのメロディーラインの下に音を入れたり、上にPadで和音を鳴らしたりすることで曲の雰囲気は変わってくるので、色々試してみましょう。
アレンジャーが教える編曲テクニック99
12、MIXする
それぞれ作りこんだ各トラック(パート)を、気持ちよく聴こえるように調整します。
ボリュームフェーダーやPANの振り分け、各トラックにエフェクトをかけたりして音色に磨きをかけていき、曲全体の完成度を高めていきます。
ここはかなり難易度が高い部分で、 僕も正直苦手な部分でもあります。
ミックスする時に仕上がりを大きく左右するのは
- PANの設定
- ボリューム
- コンプレッサーのかけ方
- イコライザー
だと思っています。
その他にも色々なエフェクトがありますが、一番重要なのは上記の4つだと思います。
ミックスに関しては感覚だけでは難しい部分があるので、参考書を読むなり、ネットで調べるなりしてある程度の知識が必要になります。
大変参考になる記事が書いてあるブログを見つけたので、貼っておきますね。
⇒
「ミックスダウンの概要と方法」~海苔のDTM生活様
13、マスタリングする
トラックの細かな調整を行い、PANや各ボリュームも全て完了して作りこんだミックス音源に最終的な仕上げを施してあげます。
ニコニコ動画にアップしたり、CDにしたりする際に聴覚上の音圧・音感を整えてあげる作業です。
具体的にはマキシマイザーやリミッター、マルチバンドコンプレッサー、イコライザーといった仕上げをしていく作業で、曲の質感を整えていきます。
このマスタリング作業も、前項のMIXと同様で非常に難しく、ただ音圧を上げるだけの作業ではないので、そこそこ経験が必要になってきます。
プロの音楽業界ではマスタリングエンジニアと言われる職人の作業工程ですので、到底太刀打ちできるものではないのですが、そこそこのレベルまでは出来るので、是非チャレンジして下さい。
ニコニコ動画では、たまにマスタリングしていないボカロオリジナル曲を見かけますが、正直「もったいない」と思います。
是非、このマスタリングもチャレンジして下さい。
エンジニア直伝!DAWミックス&マスタリング・テクニック
14、ミックスダウンしてオーディオファイルにする
これが最後の行程になります。
今まで作ってきた曲は、最終的にミックスダウンして初めてニコニコ動画にアップロードできるファイルになります。
出力はWaveで44,100kHz、16bit で出力してあげましょう。
この状態でCDに焼いたりも出来るようになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ちょっと長い道のりに思えますが、 焦らずじっくりと、まずは「始めてみること」だと思います。
作曲の世界は非常に奥深く、また自分の世界を表現できる手段の一つとも言えます。
ボカロPを始めたい方は、今一度、自分がボカロPになりたかった時の気持ちを思い出して下さい。
自分の作った曲を他の人が聴いてくれる喜び、一緒に味わいませんか?
何事も始めてみないとわかりません。
この記事が、ボカロPを始める方の助けに少しでもなったら嬉しいです。
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