VEL(ベロシティ)について
VEL(ベロシティ)は、子音の長さを調整するパラメータです。
子音の長さと言うよりも、子音の発音のタイミングを調整する方がメインと言えるかもしれません。
初期値は64になっており、この値を下げると子音の発音タイミングが前に、値を上げると子音の発音タイミングをMIDIノート(ピアノロールに打ち込んだ音)ギリギリまで発音を引っ張ることが出来ます。
子音とは
声(言葉)は、子音と母音に分ける事ができます。
アルファベット表記だと分かりやすいかと思います。
「た」と言う発音は「TA」と表記できますね。
この「T」が子音、「A」が母音と言う事になります。
VELのパラメータを調整することで、「T」の発音のタイミング・長さを調整できるということになります。
VEL(ベロシティ)の使い方
VELを下げることで、子音の発音が前に長くなるので、バラードやテンポの遅い曲は少し長めにすると良いと思います。
子音が長くなるので、歌声の言葉が聴き取りにくい場合も、気持ち長めにすることで子音が聴こえやすくなり、結果として歌声がハッキリ聴こえてきます。
逆にVELを上げると、子音の発音が短くなるので、アップテンポの曲や早口の曲の滑舌を良くする働きがあります。
VELを上げ過ぎると、子音が聴き取りにくくなってくるので、実際に聴いてみて調整することをお勧めします。
DYN(ダイナミクス)について
DYN(ダイナミクス)は、歌声の音量を調整するパラメータです。
初期値は64になっており、DYNを上げると、音量は上がり、DYNを下げると音量は下がります。
よく、ボカロ調整の参考書などで「サビはDYNを上げて盛り上げる」と書いてあったりしますが、個人的にはその方法はあまりお勧めしていません。
サビの音量を上げる際は、DAW側で調整した方が音声データを扱いやすいと僕は考えています。
DYN(ダイナミクス)の使い方
DYN(ダイナミクス)の基本的な使用法としては、前項のVEL(ベロシティ)で子音を調整しても、言葉が聴き取りにくい場合に子音の部分のDYNを上げてやります。
そうすることで、声の立ち上がりが元気になるので、結果として歌声がクッキリ聴こえてきます。
あとは、歌詞のフレーズごとに徐々に減衰していくようにギザギザを描くと、歌声にリズム感が出てくるので、僕は殆どの楽曲で、この方法を取り入れています。
また、ロングトーン(声を伸ばす)での歌声の減衰を表現する時に、ゆるやかな下降線を、放物線の様に描いてやると良いでしょう。
BRE(ブレシネス)について
BRE(ブレシネス)は、名前が示す通り「息っぽさ」を調整するパラメータです。
初期値は0となっており、値を上げると、より息が加えられた歌声が発音されます。
このパラメータはちょっと使いにくくて、値をあげると「空気感」と言うのか、若干ノイズが乗ったザラザラした音質になります。
ボカロ初心者の方は無理に使おうとせず、初期値の0からむやみに調整しない方が良いかもしれません。
BRE(ブレシネス)の使い方
BRE(ブレシネス)は、息っぽさを追加するパラメータなので、使う場合は歌い始めの子音部分にかかるよう“局所的”に使うと良いです。
0からグッと高い値まで持ち上げて、歌い始めが終わるところで0に戻すと、人間の息っぽさが表現できます。
BRI(ブライトネス)について
BRI(ブライトネス)は、歌声の明るさを調整するパラメータです。
初期値は64となっており、値を上げると声が明るくなり、値を下げると暗く、こもった感じの歌声になります。
歌声の明るさと言っても分かりにくいので、声のハリと言い換えた方が分かりやすいかもしれません。
値を上げるよりも、下げる方が効果として分かりやすいと思います。
BRI(ブライトネス)の使い方
BRI(ブライトネス)は、声のハリのようなパラメータですので、明るくノリのよい曲や、オケが激しい曲の場合は値を高めに設定しておくと良い結果が得られます。
また、値を下げることで歌声がこもった様な、力の抜けたような歌声に変化するので、ロングトーンの終わりにDYN(ダイナミクス)と併せて下げると、より自然な感じになります。
同時に音量も下がるので、調整時には音量にも気を付けましょう。
落ち着いた曲調の歌を歌わせる場合は、初期値より少し低めに設定すると、曲とマッチします。
歌い方の調整というより、表情付けに使うパラメータとなります。
CLE(クリアネス)について
CLE(クリアネス)は、歌声の高音部分を強調するパラメータです。
初期値は0となっており、値を上げると高音部分(倍音にあたる箇所)が強くなってきます。
上げ過ぎると、耳障りなジャリっとした音が混ざりますので、あまり高い値はお勧めできません。
このCLEも扱いが難しいパラメータのひとつなので、ボカロ初心者の方は無理して使う必要は無いと思います。
CLE(クリアネス)の使い方
CLE(クリアネス)は、歌声の高音域を強める働きをするので、ボカロに歌わせてみて部分的にこもって聴き取りにくい箇所に適用すると、オケに埋もれにくくなります。
歌声のキャラクター作りにも使えるパラメータですが、初期値より少し上げる程度で留めておかないと、MIX作業する際に、高音域が邪魔で、結局イコライザーで削る羽目になるので、上げ過ぎに注意しましょう。
OPE(オープニング)について
OPE(オープニング)は、口の開き具合をシュミレートするパラメータです。
初期値は127となっており、初期設定は一番口が開いた状態で歌っていることになっています。
値を下げると、ゴニョゴニョっとした感じの歌声に変化していきます。
このOPEもCLE同様に扱いが難しいパラメータのひとつなので、ボカロ初心者の方は無理して使う必要は無いと思います。
ですが、声が前に出過ぎたり、CLEが0でも耳に付く歌声の場合は、OPEを下げるという手段が使えるので、覚えておいて損は無いでしょう。
OPE(オープニング)の使い方
OPE(オープニング)は、前述したとおり声が出過ぎた部分を引っ込めたり、落ち着いた表情にする効果があります。
CLEの反対の効果に近いものなので、全体のバランスを取る時に部分的に使うといいでしょう。
GEN(ジェンダーファクター)について
GEN(ジェンダーファクター)は、声のフォルマント(男声~女声)を調整するパラメータです。
初期値は64となっており、値を上げると声質が男性よりに、値を下げると女性より(というより幼く)なってきます。
声の明るさも変わるので、曲調に合わせた歌声のキャラクター作り向けのパラメータと言えます。
GEN(ジェンダーファクター)の使い方
GEN(ジェンダーファクター)の値を調整することで、声質が変えられる為、歌声のキャラクター作りが使い方のメインとなります。
ボカロの声質を曲の雰囲気に合わせて明るく(女声)したり、落ち着かせたり(男声)という使い分けが最初は良いのではないでしょうか。
実際に耳で聴いてみて、変わりすぎないぐらいで調整しておくのが良いと思います。
また、極端に値を変更すると、ロボットのような声に変更することも出来ます。
こうした効果を狙う場合は極端なセッティングもアリと言えます。
POR(ポルタメントタイミング)について
POR(ポルタメントタイミング)は、1つの音と次に繋がる音に音程差がある場合、その音程の移動タイミングを調整するパラメータです。
初期値は64となっており、値を上げると音程移動のタイミングが後ろにずれて、値を下げると音程移動のタイミングが早くなります。
C4(ド)からG4(ソ)に音が上にあがるフレーズがあった場合、値をあげてタイミングを後ろにずらすとG4(ソ)の音節が始まってから、しゃくりあげの効果が発生します。
逆に、値を下げてタイミングを早めると、C4(ド)の発音中にG4(ソ)に向かってしゃくりあげます。
文章だとわかりにくいので、図にしました。
画像クリックで拡大POR(ポルタメントタイミング)の使い方
POR(ポルタメントタイミング)は、歌い方の表情付けが主な使い方になります。
PORの調整で、ボカロの歌い方が大分変ってくるので、ある意味、ボカロの調教師の個性が出る部分でもあるでしょう。
実際に耳で聴いてみて、しつこすぎないぐらいで調整しておくのが良いと思います。
より人間らしく歌わせたい方は、音程が上がる際はPORの値を少しあげて、若干ポルタメントタイミングを後ろにずらしてみましょう。
人間は低い音から高い音に移る際にパワーが必要になるので、若干発音が遅れがちになるからです。
高い音を発音するのはノドが疲れるのは、皆さんも十分承知している事でしょう。
逆に、高い音から低い音に移る際は、無意識に「楽」になりたいがため、早めに音程を下げようとしてしまいます。
高音から低音に音程が変わるところは、PORの値を下げて、早めにすると人間らしくなってきます。
早口な曲や、アップテンポの曲などでモタつく場合には、PORを下げて早めにすることで、滑舌が良くなる効果もあります。
PIT(ピッチベンド)、PBS(ピッチベンドセンシティビティー)について
PIT(ピッチベンド)と、PBS(ピッチベンドセンシティビティー)は共に音程を調整するパラメータです。
両者は2つでセットのようなパラメータなので、一緒に説明したいと思います。
PITは音声に対し、その音程を上げ下げするパラメータで、PBSはその上げ下げする幅を調整をするパラメータとなっています。
PITの初期値は0で、値を上げると音程が上がり(上限+8191)、値を下げる(下限-8192)と音程は下がります。
PBSの初期値は2(上限は24)で、PITの上限+8191まで上げると、キーが+2になります。
PBSの値を12にして、PITを上限まであげると、キーが+12=1オクターブあがるというわけです。
PITとPBSの使い方
基本的な使い方は、歌いだしのしゃくりあげや、ロングトーンの終わりにやや下げる等、歌い方の表情付けが主な使い方になります。
また、歌詞の子音が聴こえずらい場合など、PITを若干いじってやることで、子音が聴こえやすくなり、滑舌がよくなる効果もあります。
歌い方を揺らすことで、より人間らしく歌うことも出来るので、PITを制することが出来ればボカロの調教も制することが出来ると個人的に考えています。
裏声(ファルセット)等を表現する時は、PBSを12にしてPITの変化幅を1オクターブに設定してあげることで再現できます。
裏声に挑戦する時は、極端な設定から徐々に詰めていくとうまく再現できると思います。
まとめ
今回は、VOCALOID Editorのパラメータについて説明しました。
ボカロの調教をするうえで大切なのは根気だと思います。
ですが、パラメーターの持つ機能・意味を知っておくことで、狙った歌い方をさせることができるので、作業時間の短縮につながると思います。
次回は、「表情コントロールプロパティ」について説明をしたいと思います。
「表情コントロールプロパティ」にも
と言ったわかりにくいパラメータがありますので、出来るだけ分かりやすく説明したいと思います。
また、ボカロの調教についてもっと詳しく知りたい、実際の調教データを見てみたい!って方も多いのではないでしょうか?
最後に、ボカロ調教についてのテクニックが詰まった書籍を紹介しておきます。
ボーカロイド公式 調教完全テクニック
ボーカロイド公式 調教完全テクニック- 参考価格:2,100円
- 著者:虹原ぺぺろん
- おすすめ度:★★★★★
この書籍は、実際にボカロPとして活躍されている「ぺぺろんP」が執筆した、ボカロPによる、ボカロPのための一冊です。
今回説明したパラメータをもっと詳しく、実践的に紹介しているので、ボカロの調教が上手くいかない!って方は是非手に取ってほしい1冊です。
ぺぺろんPが実際に調教したVSQXファイルもCD-Rに収録しているので、有名なボカロPの調教データの中身を実際に見て、触ることが出来るのが大変ありがたい。
価格もDTMの機材に比べれば非常に安いので、ボカロ調教が苦手な方には非常におすすめ出来ます。
>>ボーカロイド公式 調教完全テクニック<<最後まで読んで下さってありがとうございます。
今回の記事はお役にたてたでしょうか?
これからも、多くの方にVOCALOIDやDTMの楽しさを伝えていきたいと思いますので、応援して下さる方は、ツイートやイイネ、ブログランキングの1クリックにご協力をお願いします!
あわせて読みたい!
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。