音圧を上げる方法…マスタリング
曲全体の音圧を上げるには
マスタリングという作業が最終的に必要になります。
マスタリングを行う前に行っておきたいのが、ボーカル音源をしっかりイコライザーやコンプレッサーを使って仕上げておく事です。
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事前にしっかりとボーカルを調整してカラオケ音源とMixした1つの楽曲ファイルに対して、マスタリングと言う作業を施すことで、曲全体の音圧を上げていくのです。
この時点では、音圧が稼げていない…つまり、CD等の音源に比べて音量が小さく聴こえる状態です。
注意点としては、ボーカルとMixするカラオケ音源は「未マスタリグ」の状態であることが絶対条件になりますので、間違えないようにしましょう。
マスタリングとは
マスタリングとは、上記のミックスダウンした音源に対し、イコライザーやコンプレッサー、リミッター、マキシマイザーと言ったエフェクトを使い、音圧レベルや聴覚上の音量を上げたり、曲の質感の補正を行う作業を指します。
厳密には、CDプレスの際に曲ごとの音圧・音量の違いを補正するための作業の方が正しい意味なのですが、最近の音楽業界では、曲の最終的な仕上げをマスタリングと呼ぶ場合が多いです。
本来マスタリングという作業は、 専門のエンジニアが行うもので、プロの職業として成り立っている技術です。
ですがDAWが広く普及し、経験や専門知識が少ない人でも簡単に作業が出来るようになったことで、初心者でも手を出しやすくなりました。
マスタリングの準備
それでは早速マスタリングしていきましょう。
まず、マスタリングするための準備です。
ここでは、僕のやりかたで紹介していきます。
音圧を抑えたMix音源を用意
すでにMixを終了させた歌とオケを合成したステレオ音源を用意します。
音源は出来るだけ解像度が高い方が良いのでビットレートは24bit以上で出力しておきます。
サンプリング周波数も高い方が良いですが、192kHzとか極端に高くない方が良いです。
僕は普通に44100Hzで出力して作業してます。
(パソコンの負荷がかかるので…)
出力した時点で、音圧は低い状態です。
ここで大切なのが、最大dBは-5前後ぐらいに抑えておくことです。
Mixから出力するときに、マスタートラックの音量を気にしておきましょう。
※マスタリング前の2Mix音源上記の画像の様に、最初から音圧が高い音源よりかは少し抑え目でMixした音源を用意します。
最初から音圧が高い状態だとマスタリング作業の幅が狭く、思い描いている音源は作れません。
エフェクトをかける順番
エフェクトをかける順番は曲によっても違いますし、人によってもかける順番は違うので一概に「この順番が正解」って言うものはないと思います。
ですが、一気にコンプやリミッター、マキシマイザーを使うより、イコライザー等を重ねて少しずつ音圧を稼いでいく方が自然な感じで音圧が稼げると感じています。
イコライザー(1段目)
僕が最初にかけるのはイコライザーですね。
※Cubaseシリーズ StudioEQイコライザーでコンプをかける前に「モコモコ」している300Hz付近を削ってあげます。
逆にボーカルのハリがある、3.5KHzを2.0dB程突いてます。
また、全体の音ヌケを補正するために10.0KHzあたりから1.9dBほど持ち上げました。
1段目のイコライザーでは、「気持ち整えるぐらい」で良いと思います。
ここで、ガッツリ補正をしようとするとあとで崩れます。
マキシマイザー&UV22HR(最終段)
このあとは、どんどんエフェクトをかけていきます。
最終的なイメージを作りやすいように、Maxmaizer(マキシマイザー)を下から2段目へインサートします。
この時点で下の段にエフェクトをかけるのは、クリップ(音割れ)を防止する為です。
Maxmaizerはクリップすることなく、オーディオ素材の音圧感(=ラウドネス)を上げるエフェクトです。
ぶっちゃけ、これだけでも音圧上げる事は可能です。
画像はデフォルト設定のままですが、これを使うだけでもグンと音圧が上がってきます。
※Cubaseシリーズ Maxmaizerこの状態で、ピークは0dBになりました。
Maxmaizerは、お使いのDAWによっては無い場合もあります。
その場合の対策は、この記事の一番最後の方でご案内しますが、フリーソフトで使えるものがあります。
また、Cubaseシリーズにはマスタリング用プラグインエフェクトとして「UV22HR」というものが用意されています。
このUV22HRは、Apogeeが開発した高度なディザ処理用エフェクトです。
※Cubaseシリーズ UV22HR24bitで作成した音源を16bit等へビット深度を変更する作業には欠かせないものです。
これを使うか使わないかで、最終的なミックスダウンの音質が変わってきますので、必ず使いましょう。
基本的な設定は上の図の通りで良いです。
StereoEnhancer(2段目)
左右のサラウンド感を出すためにStereoEnhancer(ステレオエンハンサー)を使います。
これはステレオ音源に対して、さらにワイド感を強めてくれるエフェクトです。
センターの音量はそのまま、サイドの音量を持ち上げてくれる様な印象のエフェクトですね。
僕はこのエフェクトが好きなので、良く使っています。
※CUbaseシリーズのStereoEnhancerStereoEnhancerもかけ過ぎるとセンターが聴き取りにくくなるので、程よいバランスのところで設定してあげましょう。
こちらのエフェクトもお使いのDAWによっては無い場合もあります。
無い場合はMS(ミッド・センター)処理できるコンプレッサーやイコライザーで代用することが出来ます。
MultibandCompressor(3段目)
僕はこの段階でMultibandCompressor(マルチバンドコンプレッサー)を使います。
別にマルチバンドじゃなくても良いです。
マルチバンドの方が、音の帯域ごとにコンプレッサーのかけ方を指定できるので、細かい音作りに適しているからです。
※Cubaseシリーズ MultibandCompressorAtackを早めにすると、音の立ち上がりが潰れて音が奥の方に引っ込んでいきます。
Ratioも極端にすると音が「息苦しく」聴こえてきますので、程々に。
リバーブ(4段目)
コンプレッサーで音のレベルを整えた所で、空間系のエフェクトである「リバーブ」を使います。
空間系のエフェクトは下の方に持ってきた方が良いでしょう。
リバーブをかけた音をコンプやマキシマイザーで何度も潰して持ち上げると、全体的に「もわっ」とした仕上がりになってしまいがちです。
※Cubaseシリーズ RoomWorks SEリバーブは本当に軽くかけています。
Pre-Delayは0に設定し、Mixも8程度にしています。
曲の全体をなじませるためのリバーブなので、深くリバーブをかけない方が良いです。
ここでリバーブを薄くかけることで、曲の空気感・透明感を調整できます。
イコライザー(5段目)
最終的に、ここでもイコライザーを使い、リバーブで持ち上がってきた不要な音を削っていきます。
※Cubaseシリーズ StudioEQまず、リバーブで音がモコモコしている150Hz付近を-2.1dBほど削りました。
超低域の20Hz付近も削ってあげると低域全体がスッキリしてきます。
また、5.0kHzのあたりに密集している楽器の倍音成分にリバーブがかかりすぎているので削りました。
そして10.0kHzの超高域も金物の鳴りがうるさかったのでカットします。
このようにリバーブの後はイコライザーで削ってあげると、リバーブがかかっていてもスッキリ聴こえてくるのです。
イコライザー(6段目)
最終的に歌声を前面に出したいので、ここでもう一度イコライザーを使います。
※Cubaseシリーズ StudioEQ歌声の太さがある500Hzと、張りがある2.0kHz付近を持ち上げて、ボーカルを前面に出します。
ここも、2.2dB程度ブーストするぐらいでいいでしょう。
マキシマイザーの調整
最初の方に使ったマキシマイザーがデフォルト状態のままなので、調整します。
音を聴きながら、Optimizeの値を上げていきましょう。
※Cubaseシリーズ Maxmaizerここで気を付けたいのはOutputの値です。
0の値よりも、ほんの少しだけ小さい値にしましょう。
僕の経験談ですが、WAV(無圧縮オーディオデータ)からMP3(圧縮オーディオデータ)に変換する際に、
0dBよりも少し最大音量が小さい方が上手に変換できるようです。小技ですので、試してみてください。
インサートエフェクト
最終的に、インサートエフェクトは下のような画像になりました。
ここで紹介したマスタリング方法は僕のやり方ですので、ひとつの参考にして頂ければいいかと思います。
歌ってみたの場合は、オリジナル曲を作った人によって、カラオケ音源が最初から音圧が高かったりする場合がありますので、曲に合わせたマスタリングが大切になってくるでしょう。
おすすめのマスタリング用プラグイン
最後になりますが、マスタリングでおすすめのプラグイン(追加エフェクトソフト)をご紹介しておきます。
実際にエフェクトをひとつずつ重ねかけしていく方法以外にも、マスタリング専用プラグインをインサートして、それで全て調整してしまう方法もあります。
有償プラグインには、最初からプリセット(最初からエフェクトを調整済みの設定集)が何十、何百と用意されているものが多く、曲やイメージにあわせてプリセットを選ぶことで、簡単にしかも無理なく音圧を上げる事ができます。
こうした有償プラグインは、そこそこ高価ではありますが、お金を払うだけの価値もしくはそれ以上の効果が得られますので、導入をお勧めしています。
W1 Limiter
対応プラグイン規格:VST、RTAS、AU
フリーソフト
ダウンロードURL:
http://www.yohng.com/software/w1limit.htmlこちらは、音楽業界で超有名な「WAVES」の画期的なマキシマイザー・リミッターである
「L1」のクローンプラグインです。
フリーソフトとしては
非常に優秀なプラグインと言えるでしょう。
今回使ったCubaseの「Maximaizer」と同じ役割をもつエフェクトプラグインです。
VST、RTAS、AUといった主要なプラグイン規格に対応しているので、殆どのDAWに対応しているのも嬉しいですね。
Cubase LEやSONAR LE等にもインストールして使えるので、バンドルソフトのDAWでも使用できるのが大変ありがたいと思います。
PSP VintageWarmer 2
対応プラグイン規格:VST、RTAS、AU
有償ソフト
おすすめ度:★★★★☆
メーカーHP:
http://www.pspaudioware.com/これは有償プラグインなのですが、DTMをやっている方で知らない人はいないほど有名なソフトです。
アナログ的な音質で音圧を稼いでくれるコンプレッサー・リミッターです。
中央のDriveのノブを回していくだけで、
どんどん音が大きくなっていきます。
画像の様に細かい調整も可能。
プリセットにはマスタリング&Mix以外にもテープシュミレート等さまざまなプリセットが用意されています。
iZotope Ozone5
対応プラグイン規格:VST、RTAS、AU、MAS、DirectX
有償ソフト
おすすめ度:★★★★★
メーカーHP:
http://www.tacsystem.com/products/izotope/000945.phpこのプラグインは、過去の記事でも何度か紹介させて頂いたものです。
マスタリングに必要なマキシマイザー、イコライザー、マルチバンドコンプレッサー、ステレオイメージ、リバーブ、エンハンサー、ディザーがすべて一つのパッケージになっています。
プリセットは250種類もあり、マスタリングの他にもMixのトラックにインサートして使う事が出来ます。
僕はOzoneを使わない曲は無いと言ってもいいほど、大変重宝するプラグインです。
あの有名な
八王子Pさんも使用していますね。
本当は教えたくなかったんですけど、価格も比較的に安く、初心者の方でも手に取りやす上、簡単に
クオリティーの高いサウンドを作れるようになります。
まとめ
初心者脱却の為の、音圧を上げる方法について、今回はご紹介しました。
マスタリングは非常に奥の深い世界で、ボカロPもマスタリングが1番苦手!!って言う方も多いぐらい難しい作業になります。
ですが、この作業をするのとしないのでは、
圧倒的に音楽のクオリティに差が出てきますので、是非
挑戦することをお勧めします、
また、有償版ですが、手っ取り早くマスタリングをするのであれば、マスタリング用のエフェクトプラグインの
プリセットが非常に役に立ちます。
プリセットを自分の曲に合わせて調整してカスタマイズしたものを保存し、他の曲で使う事も出来るので大変重宝すると思いますので、迷っているようであれば騙されたと思って導入するのも良いと思います。
(騙しはしませんが…)
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質問があるのでお答えいただければ嬉しいです!
この記事ではmix終了後のエフェクトの順番について書かれていますが、
ボーカルのみ音源でのエフェクトはどんな順番でかけるのがいいですか?
EQ
コンプレッサー
ピッチ補正
リバーブ
ディレイ
コーラス
マキシマイザー
リミッター
ボーカルエフェクトの段階では必要ないものもあると思いますが、他にも必要なエフェクト、必要ないエフェクトも教えていただければ嬉しいです!
よろしくお願いします。