VOCALOID4の新機能
最初にお伝えしておきたいのが、
VOCALOID4の新機能です。
従来のVOCALOID3のインターフェイスを踏襲しつつ、VOCALOID4では新たに
- Growl(グロウル)
- Cross-Synthesis(クロスシンセシス)
- Pitch Rendering(ピッチレンダリング)
- Pitch Snap Mode(ピッチスナップモード)
- Realtime Recording(リアルタイムレコーディング)
といった新機能が搭載されました。
まずは、これらの新機能について項目別に紹介していきます。
Growl(グロウル)
グロウルは、これまでボカロが苦手としてきた「
唸り声」を表現する新たなパラメータです。
グロウルに対応したライブラリを使うことで、「
あ゛あ゛あ゛あ゛」といった表現が出来るようになるので、ハードロックのシャウトなどにも使えそうですね。
VOCALOID4 Editor上で鉛筆ツールやラインツールを使って時間軸で歌声を変化させることができるので、ロングトーンの終盤あたりにグロウルを効かせてやると、力強い表現が可能になると思います。
ここ一番のネタ的に使うのが効果的なような気がしますが、実際にどんな声になるのか聴いてみないとわからないと思いましたので、グロウルの機能説明動画を紹介しておきます。
Cross-Synthesis(クロスシンセシス)
ボカロの中には、POWERやWhisperといった複数の異なった声質をもつLibraryが存在します。
例えば初音ミクV3やMegpoid等がそれに当たります。
これらの複数の声質を1つのトラックで使い分けることは今まで出来ず、2トラック以上を切り替えたり、ボリュームを調整して混ぜるなどの手間がありました。
クロスシンセシスは、1つのトラック内でメインとなる歌声ライブラリ(=
プライマリライブラリ)に加えて「
セカンダリライブラリ」というものを設定できるようになっており、メインで使う声質にセカンダリライブラリの声質を混ぜることが出来るようになりました。
※シンガーエディタからセカンダリーシンガーを登録できる例えば、初音ミク V3のOriginalをプライマリライブラリに設定し、セカンダリライブラリにSolidを設定して、サビの強調したい部分にSolidの声質にモーフィングさせながら歌わせる…なんてことが可能になったわけです。
動画で確認できたとおり、グロウル同様に鉛筆ツールやラインツールで時間軸でパラメーターを自由に変化させることができるようになったのですね。
ただ、初音ミクからMEIKOなどへ…といった異なるライブラリ間でのモーフィングはできず、同一のシンガーであることが条件となっています。
つまりクロスシンセシスを使うには対応したライブラリが必要で、現状のV3ライブラリで言うと
- 初音ミク V3
- KAITO V3
- MEIKO V3
- Megpoid
- がくっぽいど
- Lily
- VY1
- VY2
- ギャラ子
- IA
のみが対応となります。
>クロスシンセシス可能グループ一覧また、Megpoid、がくっぽいど、IA等は拡張ライブラリが別売りになっているので、別途購入しないとクロスシンセシスは使えないということです。
また、English系ライブラリは今のところクロスシンセシス未対応のようで、初音ミクOriginalからEnglishへモーフィングすることは出来ないようです。残念。
Pitch Rendering(ピッチレンダリング)
VOCALOID Editorはボカロが滑らかに歌わせようと自動的に
ポルタメント等でピッチを調整してくれますよね。
逆に言うと、調声作業を行っても実際に聴くまではピッチの変化がどのようになっているかが分かりにくかったと思います。
その
ピッチの変化をグラフで視覚化してくれる機能が
ピッチレンダリングです。
※烏賊の代表作「銀のLibra」をV4でピッチレンダリングしてみたピッチベンドやポルタメントで、ピッチがどれぐらい変化しているのかボタン一つでピアノロール上に表示させることができるので、個人的にはV4で一番実用的な新機能だと思いました。
また、
ビブラートのかかり具合も同時に表示してくれるようになったので、今まで以上に調声がしやすくなったと思います。
リアルタイムでピッチの状態を確認できないのは残念ですが、調声の手助けとなる機能だと思いますので、これは是非活用していきたいですね。
ちなみに4分程度の曲のレンダリング時間は、パソコン環境にもよるかと思いますが概ね1トラック5秒程度でした。
Pitch Snap Mode(ピッチスナップモード)
VOCALOIDはノートの前後の音程を判断し、なめらかにピッチを変化させて人間らしく歌わせることができますが、あえてこの機能をオフにすることが簡単に出来るようになりました。
この
ピッチスナップモードを使用することで、自動的にピッチ変化させないことが出来るので、いわゆる
ロボットボイス的なものが作れます。
ピッチスナップモードは、VOCALOIDエンジン側が行う自動調整のポルタメントやピッチベンドをカットする機能なので、ピッチスナップモードをONにした状態でもピッチカーブを描いてやれば、ピッチを変化させることができました。
状況に応じてうまく組み合わせて使うと良いと思います。
Realtime Recording(リアルタイムレコーディング)
リアルタイムレコーディングは、
VOCALOID4 Editor for Cubase
のみの機能になりますが、MIDIキーボードを演奏することでボカロを
リアルタイム入力出来るというものです。
歌声は「
あ、い、う、え、お、ら、り、る、れ、ろ」の中から選ぶことができ、今まで以上に直感的にボカロのメロディー作成が行えるようになりました。
動画でもお分かり頂けると思いますが、
ベロシティーも同時に入力できる様になっています。
今のところリアルタイム入力で歌詞を歌わせることはまだ出来ないようですが、いずれ出来るようになるといいですね。
VOCALOID4 新ライブラリ
さて、色々と新機能が満載のVOCALOID4ですが、Editorの発売に伴って新ボカロの情報も確認しておきたいと思います。
VY1V4
VOCALOID4 Library VY1V4
VOCALOID4シリーズ初となる、ヤマハ純正の女性歌声ライブラリ。
4つの声質(Normal、Soft、Power、Natural)がパッケージされており、もちろん「グロウル」「クロスシンセシス」など、VOCALOID4の主要な新機能をすべて使用できます。
“クリアな滑舌と力強いロングトーンであらゆるジャンルを歌いこなす、スタンダードな質感”とのことですが、下のデモソングを聴くと納得。
非常に高いバランスとレベルで歌わせることが出来るライブラリとなっているので、初めてボカロを触る方や、キャライメージ付けを好まない音源を作りたいときに活躍しそうです。
【VY1V4】 公式デモ曲Gerbera/ぺぺろんP
巡音ルカV4X
巡音ルカ V4X
日本語と英語のバイリンガルボカロ「
巡音ルカ」がV4Xとなって登場。
日本語DB「HARD」「SOFT」、英語DB「STRAIGHT」「SOFT」の合計4つのライブラリが収録されており、
日本語も英語もクロスシンセシスに対応しています。
クリプトン製のボカロはボーカルエディタ「
Piapro Studio」が付属しているので、VOCALOID4 Editorを持っていなくてもボカロの調整を行えるうえ、
Studio One Artist Piapro Editionという
DAW(楽曲制作ソフト)も同梱しているので、買ったらすぐにボカロPとしての活動が始められるのが特徴です。
VOCALOID4 Editorの新機能「グロウル」や「クロスシンセシス」もPiapro Studioに搭載されるのですが、Piapro Studio独自の
E.V.E.C(イーベック)を新たに搭載。
音符毎の声の張りの強弱、声色変化や語尾の息の成分、子音強調などのコントロール機能が使える様になるようです。
Piapro Studio独自のE.V.E.Cは下記の3つの機能を持っています。
■Voice Color
歌の中の音符一つひとつに対して、声の表情コントロールが可能。
強い/弱い/可愛いなど複数声色から選ぶことが出来る。
■Voice Release
語尾の息の成分をコントロール可能。
セクシーな甘い吐息、アンニュイな語尾息の表現ができるようになる。
■子音拡張機能
音素を重複させることで、子音を長くして補強することが可能。
『巡音ルカ V4X』機能紹介デモムービー
結月ゆかりV4、純、穏、凛
AHSからは、結月ゆかりのV4版が発表されました。
V3版の歌声そのままにグロウルなどを追加した「
結月ゆかり 純」に加えて、ウィスパーボイスの「
結月ゆかり 穏(おん)」、パワーのある歌声が特徴の「
結月ゆかり 凛」が現在開発中とのことです。
デモ音源も公開されていますので、紹介しておきますね。
「VOCALOID™4 結月ゆかり 穏」デモ02
「VOCALOID™4 結月ゆかり 凛」デモ01
猫村いろは、miki、歌愛ユキ、氷山キヨテル
さらにAHSからは、結月ゆかり以外にもVOCALOID2のボカロ4製品もVOCALOID4として新たに発売を予定されているようです。
猫村いろはSF-A2開発コードmiki
ボカロ小学生 歌愛ユキ
ボカロ先生 氷山キヨテル
こうしたVOCALOID2時代のボカロがV4として復活するのは個人的には凄く嬉しいです。
VOCALOID4と3、2の互換性
VOCALOID4 Editorのファイル形式は今までの
VSQXでした。
VOCALOID3で作成したデータは、特に何もしなくてもVOCALOID4 Editorで問題なく開くことが出来ました。
クロスシンセシスに対応しているボカロをお持ちであれば、もちろんプライマリシンガーとセカンダリシンガーを設定することが出来るので、VOCALOID4 Editorを手にするだけでも調声に幅が出るということです。
逆に、V4で作ったデータをV3で読み込む場合はクロスシンセシスやグロウルと言ったパラメータに対応していないので、データが一部失われてしまいます。
VOCALOID3のライブラリは、V2→V3の時の様に
ライブラリインポートする必要が無いので、ほぼ、そのまま使えると考えていいでしょう。
VOCALOID2のライブラリをV4で使う場合は、今のところVOCAOID3 Editorに付属する「
Library Import Tool」を使用する必要があります。
V3を持っていない人がVOCALOID2からVOCALOID4へ一気に乗り換える方は注意が必要ですね。
その場合、「どうしてもV2ボカロをV4で使いたい!」という場合はあえてVOCALOID3 Editorを購入し、無償バージョンアップでV4を手に入れる…という方法が良さそうです。(期間限定)
VOCALOID2で作成したデータ(VSQ)もVOCALOID4 Editorで読み込むことが出来ました。
VOCALOID4は買いか?
さて、グロウルやクロスシンセシスなどの新機能を盛り込んだ
VOCALOID4ですが、果たして“買い”なのでしょうか?
今までの情報をまとめると、
- グロウルは対応したライブラリでないと使えない
- クロスシンセシスは対応したライブラリさえ持っていれば使うことが出来る
- ピッチレンダリングで、視覚的にピッチカーブを見ることが出来る
- ピッチスナップモードが搭載された
- VOCALOID4ライブラリのラインナップがまだ少ない
といった部分で、ユーザーの意見が分かれるところだと思います。
個人的な意見としては、欲しいV4ライブラリが出る予定なのであれば購入すればいいと思いますが、クロスシンセシスやピッチレンダリングに魅力を感じない方は、急いで購入する必要はないと思います。
※GUIはV3とほとんど変わらないので、操作感はそのままVOCALOID3 Editorを持っている方であれば、
VOCALOID STOREで優待販売をしているので、VOCALOID4 Editorが通常価格の約半額=5,400円でダウンロードできるので、導入自体はそこまでコストは高くないと思います。
クリプトン製の初音ミク V3、KAITO V3、MEIKO V3をお持ちの方は、巡音ルカV4Xを導入すると、Piapro Studioの「巡音ルカ V4X」を導入することで、お使いのPiapro Studioのエンジンが、VOCALOID3エンジンからVOCALOID4 エンジンにアップグレードされます。
VOCALOID4 Editorが無くてもPiapro StudioでV4のクロスシンセシスやピッチレンダリング機能が使えるようになるので、巡音ルカV4Xを導入予定の方はPiapro Studioを使ってみてから検討…でも良いかもしれません。
製品情報
最後に製品情報をまとめておきます。
VOCALOID4 Editor
VOCALOID4 Editor
- OS : Windows 8.1, Windows 8, Windows 7 (32/64bit)
- CPU : Intel Dual Core CPU
- RAM : 2GB以上
- ハードディスク容量 : 4GB以上の空き容量(1歌声ライブラリを含む)
※上記条件はVOCALOID4ライブラリ VY1V4(3.5GB)の場合です。歌声ライブラリの容量によって異なりますので商品ごとにご確認ください。
- 対応ライブラリ(別売) : VOCALOID4 Library商品, VOCALOID3 Library商品
※グロウルなど、VOCALOID4特有の機能はVOCALOID3ライブラリでは動作しません。
- その他;DVD-ROMドライブ、オーディオデバイス
※アクティベーションならびに最新バージョンのアップデートを行うためにコンピュータがインターネット環境に接続されている必要があります。
※上記の動作条件を満たしている場合でも、全てのコンピュータにおける動作を保証するものではありません。
※コンピュータの総合的な性能により同時に使用可能なトラック数などパフォーマンスに違いがあります。
VOCALOID3 Editorをお持ちの方は、優待販売がお得です。
→VOCALOID STOREへ
VOCALOID4 Editor for CUBASE
VOCALOID4 Editor for Cubase
- Windows OS : Windows 8.1, Windows 8, Windows 7 (32/64bit)
- Mac OS X : Mac OS 10.9, 10.8 (32/64bit)
- CPU : Intel Dual Core CPU
- RAM : 2GB以上
- ハードディスク容量 : 12GB以上の空き容量(Cubaseならびに1歌声ライブラリを含む)
※上記条件はVOCALOID4ライブラリ VY1V4(3.5GB)の場合です。歌声ライブラリの容量によって異なりますので商品ごとにご確認ください。
- 対応DAWソフトウェア(別売) : Cubase 7.5, Cubase Artist 7.5, Cubase 7, Cubase Artist 7, Cubase Elements 7, Cubase AI 7, Cubase LE 7
- 対応ライブラリ(別売) : VOCALOID4 Library商品, VOCALOID3 Library商品
※グロウルなど、VOCALOID4特有の機能はVOCALOID3ライブラリでは動作しません。
- オーディオデバイス(Windows) : Windows 対応オーディオデバイス (ASIO 対応デバイス推奨)
- オーディオデバイス(Mac) : CoreAudio 対応オーディオデバイス
その他:DVD-ROMドライブ
※アクティベーションならびに最新バージョンのアップデートを行うためにコンピュータがインターネット環境に接続されている必要があります。
※上記の動作条件を満たしている場合でも、全てのコンピュータにおける動作を保証するものではありません。
※コンピュータの総合的な性能により同時に使用可能なトラック数などパフォーマンスに違いがあります。
VOCALOID Editor for CUBASEおよびVOCALOID3 Editorをお持ちの方は、優待販売がお得です。
→VOCALOID STOREへ
まとめ
ボカロは
VOCALOID4の誕生に伴い、新しい時代に突入したとも言えるでしょう。
より自然に人間らしく歌わせるための
グロウルや
クロスシンセシスといったパラメーターの実装や、より効率的に調声作業が行えるようになる、
ピッチレンダリング、ピッチスナップ、リアルタイム入力と言った機能の追加で、今まで以上にボカロを歌わせやすくなったと思います。
現役のボカロPさんはもちろん、これからボカロPを目指したい人にとっても、一層磨きがかかった新しいVOCALOID4 Editorを使うことで、よりよい楽曲作りの手助けとなるでしょう。
VOCALOID4 ライブラリも徐々に充実していくと思いますので、今後のボカロ界がまた楽しみになりましたね。
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